Cloudy Ridge
大型の低気圧が迫ってきた朝。今日は現場のための土取りから一日がスタートしました。寒さに凍えて気分は低かったのですが、雲が降りた山の尾根の雄大な景色をみることができ、得をした気分になりました。
大型の低気圧が迫ってきた朝。今日は現場のための土取りから一日がスタートしました。寒さに凍えて気分は低かったのですが、雲が降りた山の尾根の雄大な景色をみることができ、得をした気分になりました。
完成を目前に控え、現場でみんなで火とナバホブレッドを囲んでパーティーを行いました。学生が作ったデッキ部分のFIRE PITに火をくべて、みんなで残りわずかになった時間を惜しみつつのお祝いです。
火も沈み、みんなのお腹がすいた頃に今度はナバホ家庭料理、ナバホブレッドパーティーが始まりました。パン生地を作る要領で小麦粉を捏ね、手の平を使って生地を延ばしていきます。ナバホの皆さんがやるのをみると、とってもとっても簡単そうなのですが、もちろん、私たちはそんな簡単には行きません。。
自分で延ばした生地をその場で揚げて、かぶりつきます。寒いこの時期に食べる熱々の揚げパンはとてもおいしいものでした。作るのも楽しいし、食べてもおいしいし、ついつい食べ過ぎてしまいました。
私たちにはもちろん、楽しい夜となりましたが、今晩はクライアント家族の皆さんもとても楽しんでいるようでした。ナバホの歌や食をみんなで共有できたことが、残り少なくなった作業への糧となりそうです。
今週は来年以降のクライアントを決めるために、2組のナバホ家族に会いました。写真の女性はそのうちのお一人、60代のご夫婦です。
実は私たちは彼女の弟家族にすでに住宅を一棟建ており、それで彼女はこのプログラムを知り連絡を戴いた次第です。ただ、同じ一族にいくつも住宅を建ててしまうと、それは贔屓と見なされ、嫉妬の対象にもなりかねません。慎重にクライアントを決定する必要があるので、なぜ住宅を必要としているのかを伺いました。
彼女の主な住宅を必要とする理由は、簡潔にいうと「介護」のようでした。80代のご両親がご健在で、長女として親の面倒をみる必要が出てきた。ただ、それには手狭なので新たに住宅を必要としているのです。ナバホの家族体系は私たちの体系とは少し異なり、夫婦であってもそれぞれ別に住んでいたり、結婚をしていない夫婦間に子供がいることも一般的です。そのため、彼女の場合には、父親の面倒は他の兄弟がみるけど、母親は自分が世話をする、未婚の子供に代わって、祖父、祖母にあたる人物が孫の面倒もみる必要があり、住宅が手狭だという話しの様です。
昨今の日本人家族が抱える介護等とは状況は異なり、家族の人数が多い分、面倒をみなければならない家族が多いということに彼女は悩んでいた様ですが、個人主義のアメリカではなかなか聞かない介護の話しを伺ったことに少し驚きつつ、ナバホ家族の持つ問題を少し知った気がしました。
一年後、来年の秋のプロジェクトの為のクライアント探しが始まりました。クライアントの決定方法については以前にもご紹介したので、今日はクライアントに最初にお願いしなければいけないこと、理解を求めたいことを書き留めておきたいと思います。
①コミュニケーション
これは住宅供給プロジェクトでもありますが、建築学生への教育プログラムです。ああなたの現場が教育の現場にもなります。白人学生の文化とナバホ族の文化に違いはあるかも知れませんが、学生とコミュニケーションをとってもらい、一緒に住宅を作り上げていく様な気持ちが必要となります。
②人目
学生のデザインしたものを建てるので、一般的な他のナバホの住宅より奇抜なものになる可能性があります。その分、好意でも、悪意でも、人目を惹くことも考えられます。また完成した後は、このプログラムの支援者への報告として、今後の学生たちへの参考として、あなたの住宅を見るために、年に数回人が訪れたり、写真をとることになると思います。
③修理
プロ集団で住宅を建設するわけではありません。ディティール等において満足のいくものでないかもしれませんが、機能する限りはその内容で了承していただくことになります。また無料で住宅をプレゼントしますが、完成後は基本的にアフターメンテナンスは行いません。引き渡し後のメンテナンス等は自己負担になりますが、ご了承ください。
これまでは、このような説明を事前に行わず、「住宅が無料で手に入る」と、いい部分ばかりをクライアントが考えていたので、 ①〜③の何かが欠けてしまい問題になったり、気持ちよい関係が崩れてしまうことがたびたびあったのです。物事を説明するときには、良い面だけではなく、悪い面も説明する必要があることを学びました。
浴室などの水回りの仕上げはタデラクト、と呼ばれる石灰の仕上げで行うことにしました。この仕上げは私達2人にとっては初挑戦。機会を作ってくれた学生の期待に応えるためにも、多くの見本を作って実験してきました。さて結果は?
結果は予想以上の美しい仕上げとなりました。現場から採取した砂で色をつけ、人の手で手間を掛けて出来た仕上がりはとても美しく、参加した学生はもちろん、他の学生達も見にきたり、クライアントも喜んでくれました。
常日頃から、自然素材の美しさを感じてほしい、購入したものより自分たちで作ってほしい、と伝えてきたつもりなので、今回の左官仕上げによって、学生達が少しでも私たちの気持ちを感じてくれたら、それが私の大きな役目だと思っています。
モルタル下地はあまり平にしすぎない方がおもしろい模様ができる。
今回は石灰と砂を半分づつ混ぜ、それを出来るだけ薄く塗っていく。2〜3層塗る。
金鏝で表面が少し乾く程に押さる。表面が固くなり、プラスチックを当てられる様になって来たら少し強めに磨く様に押さえる。
プラスチックで十分押さえることが出来るほどの表面強度になったら、その上に石けん水をブラシで塗り、石で石鹸水を塗り込む様に磨いていく。この段階でまだ細かい凹凸があれば、それを修正してもよし。
そんな方法で、美しい大理石のような仕上げが完了しました。みんなつるつるに仕上がった壁に大満足です。