デザインビルドブラフの講評会と学生のデザイン
先日、デザインビルドブラフに参加しているユタの建築学科大学院生の講評会に参加しました。参加学生は18人で、男子学生がかなり多いグループ。今回の講評会では、講評する先生の選出、講評会の段取りを依頼されたので、講評する先生とスタッフを2つのグループに分けてみました。1グループは、ユタ大学の建築学科で教えている先生方で構成されたデザイン講評グループ。もう一つは、デザインビルドブラフのスタッフ陣で構成された、施行講評グループです。数年前からこのデザインビルドブラフのプロジェクトが、学生が学校で教わったデザインデベロップメントのスキルとあまりリンクしていないのでないかと思っていました。実際に学生が作業することから、デザインや構造は、できるだけシンブルでなければならないのですが、あまりに普通の家になってしまっています。空間のおもしろさや、構造のおもしろさを、学生の手でデザインビルドする方法を模索しています。これまでの講評会では、主に空間のおもしろさ、心地よさを主題とした講評が行われており、学生は、実際に施行する段階になり、いかに、難しい施行のデザインだったか現場で実感するような流れになっていました。デザインする段階で、もう少し、施行を考慮したデザインを考える事が出来るのではないかと考え、このような講評を行う事にしました。次回は、デザインの段階から、施行性、デザイン両方を学生に教えることができれば、より良いデザインが学生から生まれやすくなるのではないかと期待しています。
しかしながら、学生のデザインのコンセプトが、最終プレゼンテーションが近づくにつれて、あやふやになってしまうという問題もあります。毎回、感じることですが、最初は、ほぼすべてのデザインが面白いのに、最終的なプレゼンテーションでは、最初に感じた面白さが残っている物は少なく、最初のアイデアに磨きを掛けたデザインは、ほとんどありません。無理矢理押し込んだトイレや機械室がプランから鮮明に感じる事ができたり、コンセプトからかけ離れたデザインだったり、クライアントにどんな生活をしてもらいたいか、全く伝わらない建物になってしまいます。学生にあまりに多くを望むのは、良くないと思いますが、実際に、建築を1つ創造し、クライアントの今後の生活をより良くするという意気込みがもう少しあってもいいのではないかと、学生のことを考えると、すぐ愚痴っぽくなってしまいますが、学生に、施行に関する講評と、デザインに関する講評が、全く違う講評であり、その両方が必要であることを学生が自分たちで気がついてもらえるればと思います。
さらに、もう一つ、気になった事があります。学生のグループ作業についてです。デザインを始めたばかりの頃は、2、3人で、作業したのですが、気がついたら、1人でデザインしている学生が、どんどん、増えて来て、最終的に、7人もの学生が、個人で、プレゼンテーションしていました。そのなかの数人は、やっぱり、完成度が悪く、「模型がない」とか、「平面図がない」といったプレゼンになっていました。もうすこし、デザインでのベロップメントを組織しないといけないのが、いまのデザインビルドブラフの問題なのですが、どうやって、個人のキャラクターを殺さずに、グループ作業させるかという、とても難しい問題が、明確になりました。
さて、講評会での、講評の内容ですが、僕が参加した、施行グループでは、主にプレハブについて、議論しました。今回のプロジェクトでは、4ヶ月で、18人の学生がプレハブの住宅を2棟、建てる事になっているからです。そこで、大きな問題に気がつきました。学生のほとんどが、SIPS PANELのような、既存のプレハブ用建材を使用することを、プレハブと捉えており、普通の建築デザインと全く変わらないデザインを、提案していた事です。僕としては、パネルを地元の人に作ってもらえるようなプレハブシステム考えて、住宅を提供するばかりではなく、仕事も提供できるような建築や、家族が心地よく生活できるテントデザインの提案を希望したのですが。
そんな、学生のアイデアの中から、今回は、3つのデザインを選択しました。来年1月から、ブラフでの共同作業が始まることから、今回の学生たちに、グループ作業に慣れてもらうため、もう一度、グループを3つ作り直し、2週間かけて、その選択した3つのデザインを、面白くしてもらい、最終的に今回のプロジェクトのデザインを選択する事になりました。